刑事弁護人が法務省のQ&Aを斬ってみた!Q5(身体拘束と無罪推定)

Youtube「刑事弁護人が法務省のQ&Aを斬ってみた!」シリーズ,第5弾です。

こちらのページでは,動画内では解説しきれなかった情報や,より詳細な解説をご覧いただけます。

法務省Q&Aの出典はこちらです。

http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/20200120QandA.htm

動画はこちら。

Q5 「無罪推定の原則」とはどのような意味ですか。逮捕や勾留を繰り返して長期間にわたり身柄拘束をすることは,この原則に反するのではないですか。

A5【法務省の回答】「無罪推定の原則」とは,刑事裁判の被告人は,裁判により有罪と認定されるまでは,有罪として取り扱われないことをいいます。

日本の刑事司法制度においては,起訴された罪を被告人が犯したことについて,検察官が,裁判所に対し,合理的な疑いを差し挟む余地のない程度まで,証明をすることができなければ,被告人は有罪とされず,無罪が言い渡されることになります。これを「検察官の証明責任」といいます。

このように,「無罪推定の原則」は,公判において,被告人が罪を犯したことの証明責任を検察官に負わせるものです。

【我々の回答】身体拘束が継続していること自体が,刑罰のように機能しており,有罪として取り扱っていることになるのではないでしょうか。前回の我々の回答でもお伝えした通り,多くの事件で勾留がなされ,その期間も長期に渡ります。

裁判でも,「合理的な疑いを差しはさむ余地のない程度」というのが,簡単に認められてしまっています。検察官に立証責任があるはずであるのに,被告人・弁護人が立証責任を負わされているような感覚があります。日本の裁判では,起訴された事件のほとんどが有罪の判決になっています。しかし,果たして,起訴された事件のほぼすべてが有罪だということは本当にあり得るのでしょうか。検察官・裁判官もあくまでも人間です。事実認定の過程に誤りが生じないということは考え難いのではないでしょうか。

 

(参照資料)平成30年度 司法統計  刑事訴訟事件の種類及び審理期間別未済人員  地方裁判所

【法務省の回答】他方,逮捕や勾留は,個々の事件において,罪を犯したことの嫌疑があるか,証拠隠滅や逃亡を防止するために身柄拘束の必要があるかなどの要件が満たされていることを裁判官や裁判所が事前にチェックし,令状が発付されてはじめて認められるものです(現行犯人逮捕等の場合を除きます。)。

したがって,「無罪推定の原則」と被疑者・被告人の身柄拘束(逮捕,勾留)とは無関係です。つまり,身柄を拘束することは,被疑者・被告人を無罪と推定した扱いではないという主張は誤りです。

【我々の回答】否認・黙秘している場合には,身体拘束からの解放が認められにくいという現状はあります。実際に,保釈請求の際に出される,検察官の意見や,裁判所(裁判官)の決定には,被告人が否認をしていることや黙秘をしていることを理由に保釈許可すべきではないという理由付けがなされることがあります。

裁判を受ける当事者が,塀の中で生活を強いられ,まともに裁判の準備をできないのは異常な状況です。無罪推定ならば,否認している場合こそ,通常の社会生活を送れるように,早期に釈放すべきではないでしょうか。

 

次回は,

日本では,不当に自白が重視されているのではないですか。捜査機関が,長時間にわたる被疑者の取調べをしたり,自白するよう被疑者に強要したりすることは,どのように防止されるのですか。                                              

です。

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