刑事弁護人が法務省のQ&Aを斬ってみた!Q14(検察権の行使は外部からの影響を受ける?)

Youtube「刑事弁護人が法務省のQ&Aを斬ってみた!」シリーズ,第14弾です。
こちらのページでは,動画内では解説しきれなかった情報や,より詳細な解説をご覧いただけます。
法務省Q&Aの出典はこちらです。
http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/20200120QandA.htm
動画はこちら。

【法務省の回答】
 検察権の行使は,法と証拠に基づいて公正になされるものです。
 検察当局は,いかなる誘引や圧力にも左右されないよう,厳正公平・不偏不党を旨としています。
 このことは検察が公表した検察の精神及び基本姿勢を示す「検察の理念」(平成23年9月28日開催の検察長官会同(注)において策定された規程)に明記されています。
 検察の起訴が法と証拠に基づいたものであるかどうかは,問2の答にもあるとおり,裁判所が,立証責任を負う検察官の立証に加え,被告人側から提出される主張や証拠をも十分に吟味し,独立した公正な立場で判断することになります。

【我々の回答】
 この回答は質問の答えになっていません。
 抽象的な理念がある中で,個々の検察官の行使が不適当なものになっているのではないかというのがここでの問題意識だからです。
 法律は,検察官の起訴に広範な裁量を認めています(起訴便宜主義。刑事訴訟法248条)。またこのほかにも,ある事件を立件するかどうか,逮捕状を請求するかどうかも,検察官が決めることも有ります。検察権の行使は,「法と証拠と【検察官の裁量】に基づいてなされるものです」というのが正しい説明でしょう。そして,この裁量の行使について,国策捜査であるとか,特定の人物を不当に立件しなかったなどという批判がなされていることは周知のとおりです。もっとも,こうした不透明な裁量というのは,いわゆる「忖度」的に行われることも多いと思われますし,国民に開示された情報もごく限られていますので,批判を証明することができないのは,難しいところです。しかし,少なくとも,この法務省の回答は,抽象的な理念だけを述べるのではなくて,こうした疑問に対して少しでも真摯に答えるべきだったのではないかと思います。
 ところで,この回答の中に,「検察以外の特定の利害関係者などの外部からの働きかけによって」との限定がついているのは,気になります。検察内部の利害関係によっては左右されるのでしょうか。働きかけがなくとも,特定の外部の利害関係者に「忖度」することはあるのでしょうか。どうしてこのような限定を付けたのか,疑問でなりません。

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